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Dark 2 ダーク (シーズン 2)

ドイツTVシリーズ (2019)

Netflix初のドイツ語のオリジナルTVシリーズ。放映は2019年6月21日にシーズン2を一括配信。シーズン1の内容をさらに複雑にした話題作。IMDbの評価は、シーズン1(8.68、0.38)、シーズン2(9.36、0.23)〔ただし、この値は、特にシーズン2の方は時間の経過とともにどんどん下がる傾向にある〕。個人的には、シーズン1の方が好きだ。『Dark(ダーク)』の舞台となっているのは、原子力発電所で成り立っている北ドイツの架空の町ヴィンデン(Winden)。主だった登場人物の家系は、ニールセン、カーンヴァント、ティーデマン、ドップラーに限定され、時代が1920年、1953年、1986年、2019年、2052年に拡がっているため、同じ家系の祖父母から孫までが複雑に絡み合っている。こんな小さなグループの中で生まれた1人の狂人が、世界全体の運命を左右するという発想は、ヒットラーを思わせて強く反撥を感じる。ただ、シーズン1と2を通して語られる11歳のミッケルの巻き込まれる “時間の罠” は、新鮮な発想で、そこだけ取り上げてみると面白いと思い、TVシリーズではあるが、例外的に取り上げることにした。なお、翻訳にあたっては、台詞をそのまま受け継いだドイツ語字幕をベースとした。また、人物関係の理解にあたっては、ファンサイト「DARK WIKI( https://dark-netflix.fandom.com/wiki/Dark_Wiki)」を参考にした。

ミッケルが過去に来て半年以上が経ってもPTSD(心的外傷後ストレス障害)がトラウマとして残っている。2020年6月22日も、母カタリーナの誕生日のため、過去が思い出され、学校をさぼって洞窟まで歩いていく。すると、入院中にも病院のカウンセラーになっていて2度会ったことがある “町の教会の牧師” ノアがそこにいて、中に入らないよう勧める〔ノアは、“66年後のヨナス” と自称する謎の人物 “アダム” に仕えるタイムトラベラー〕。その頃、洞窟の中では、“33年後のヨナス” が、“2020年のハンナ” を、1954年に連れて行こうとしていた。ハンナの夫のミハエルが、2019年から1953年に移動したミッケルだと証明するためだ。一方、洞窟から戻ったミッケルは、養母イネスの優しさに触れ、心を癒される。そうしたミッケルの姿を窓の外から確認したハンナは、1年前に自殺した夫ミハエルのことが想い出されて、複雑な感情に襲われる。一方、エゴンは、もう退職していたが、未解決のマッツ失踪から約1年を批判する地元紙を見て、過去の手帳に目をやる。そして、自分が33年前に逮捕した正体不明の男〔ウルリッヒ/ミッケルの父/マッツの兄〕がどうなったか気になる。そして、現在も精神病院に収監されていることを知ると面会に行く。エゴンに対し、ウルリッヒは初めて自分の名前を明かすが、それはエゴンには信じられない名前だった〔ウルリッヒは、8ヶ月前、エゴンが マッツ事件の第一容疑者だと思っていた16歳の少年〕。しかも、ウルリッヒは、「未来から来た」などと異常なことも口にする。ただ、エゴンは、ウルリッヒという名前を、別のところでも聞いた覚えがあった。エゴンは昨年の11月6日のミッケルの調書を見直す。そこには、「お父さんの名前は?」と訊き、「ウルリッヒ・ニールセン」と答えたと書かれてある。その時は、ウルリッヒに脅されて行った狂言だと思ったのだが、こうしてみると、新たな展望が開けてくる。そこで、エゴンはイネスに会いに行き、ミッケルの写真を手に入れる。その写真を見た、精神病院のウルリッヒは、エゴンがすべて承知の上で隠していたと勘違いし、怒りを爆発させる。そして、精神病院を抜け出し、ミッケルに会いに行く。ミッケルは、自分が7ヶ月前に使った重要な言葉をウルリッヒが口にしたことで、その老人が父だと分かる。2人は2020年に戻ろうと洞窟に向かって走るが、それを阻止したのは、イネスから通報を受けたエゴンだった。こうして、ミッケルは2020年に戻る機会を永遠に失った。一方、2020年のヨナスは、複雑なルートを経て、1922年にいるアダムに会い、父ミハエルの自殺をとめれば、すべての矛盾は消えると嘘を教えられ、ミハエルの自殺の前日にタイム・ジャンプする。しかし、ミハエルには元々自殺する気などなかった。アダムの計略は、息子のヨナスに自殺を止めさせようとすることで、逆に、自殺の必然性をミハエルに納得させることにあった。アダムは2020年6月27日に一旦世界を破壊させ、新たなサイクルを始めようと企んでいるが、ミハエルが筋書き通り自殺することで、企みに対する障害は取り除かれる。なお、この解説も、下のあらすじも、ミッケル/ミハエルに関係する部分のみ。

ミッケルを演じるのは、ダーン・レナード・リエブレンツ(Daan Lennard Liebrenz)。2005年11月22日生まれ。シーズン2の撮影は2018年6月25日に開始された。ということは12歳半になっている。この年代の少年は、外見の変化が早い。11歳の初めと12歳半ではかなり違う。シーズン2の主な設定は、シーズン1の7ヶ月後なので、かろうじて違和感を感じなくて済むが、後半にかけてシーズン1の5ヶ月前に遡る部分があり、その際には違和感は否めない。映画でも、ハリーポッター・シリーズの場合、設定年齢とダニエル・ラドクルフの実年齢の差がどんどん広がり、最後の方ではかなり違和感があった。シーズン2では、そこまでひどくはなかったが、もし万一、この先、シーズン3、ファイナル・シーズンで登場することがあれば、よほど工夫しないと おかしなことになる。


あらすじ

シーズン2第1話「始まりと終わり」に、ミッケルは登場しない。第1話は、1921年から2052年まで拡がった番組の舞台を説明するため、様々なエピソードが細切れに語られ、非常に分かりにくい。その中でも、恐らく最重要のシーンは、冒頭に出てくる “ヴィンデン洞窟内の通路を掘る” 場面だろう。1921年6月21日付けの場面では、通路はまだ完成していない。掘っているのは、若い頃のノアと もう1人の男。ノアは、まだ牧師ではないが、作業の相棒が、信仰を失ったと判断すると、直ちにつるしはで殺害する。1986年のヘルゲによる少年の拉致・実験台としての殺害は、ノアの命令によるものなので、この男が青年の頃から残虐だったことが分かる。その後、青年のノアと牧師のノアが2人で “すべての首謀者” アダムに会う場面があることから、牧師のノアは洞窟内の通路を通ることなくタイムトラベルできることも分かる。シーズン1でヨナスが使っていた小型のタイムマシンは、2019年から±33年しか移動できない。ノアは、“ポータル〔Portal〕” いう一種の力場を使って移動する〔なら、なぜ少年を実験台にして別のタイムマシンを作ろうとしたかの説明は一切ない〕第2話「ダークマター」の冒頭、1987年6月22日と表示される。シーズン1から半年以上が経ったことになる。そして、その下に、「終末まであと5日」の文字が入る。この終末は1987年に起きるのではなく、2020年6月27日に起きる。というのは、ヨナスが飛ばされた2052年では、原子力発電所の冷却塔が破壊され、墓地に並ぶ粗末な木の墓標群から多くの人が2020年6月27日に死んだことが確認できるからだ。そして、悪夢を見たミッケルがベッドから飛び起きる(1枚目の写真)。ミッケルの部屋は、後から映るヨナスの部屋と同じ。ベッドの脇には大きなロボットのおもちゃ、棚にはいろいろなゲームが積んであるので(2枚目の写真)、イネスがミッケルを可愛がってしることが良く分かる。それにもかかわらず、あれから半年も経つのに、ミッケルの顔は悲しそうだ(3枚目の写真)。PTSD(心的外傷後ストレス障害)が、まだ治っていない。
  
  
  

キッチンでは、イネスが、パンにバターを塗り、ハムを載せている。そこに、着替えたミッケルが降りてくる(1枚目の写真)。「まだ、眠たそうね。いつもより、少し遅いわよ」と言い、真っ赤なランドセルにサンドイッチを入れる(2枚目の写真)。ミッケルの様子が変なので、「ほら、元気を出して。あと1週間で 夏休みよ」と元気付ける。「今日は、ママの誕生日なんだ」。イネスは、「そのことは、話し合ったでしょ。過去は過去〔Die Vergangenheit ist die Vergangenheit〕…」。ミッケルが、「今は今〔jetzt ist jetzt〕」と受ける(3枚目の写真)。「それでいいのよ」。ミッケルは肩をすくめる。「さあ、行って」。
  
  
  

ミッケルは、いつも通りに学校に行くが(1枚目の写真)、母カタリーナの誕生日ということで、昔の日々の思い出が急に甦り、33年前の学校に急に違和感を覚える(2・3枚目の写真)。
  
  
  

若い頃のカタリーナ〔ミッケルの将来の母〕が、ぼうっと立っているミッケルの背中にわざとぶつかりって、「邪魔だよ、このトンマ」と罵っていくと、ますます悲しくなる。ハンナは振り返って見るが(1枚目の写真)、何も言ってくれないし、カタリーナに「ハンナ、行くよ」と呼ばれると、さっさと行ってしまう(2枚目の写真)。カタリーナはハンナに、「何、見てんのよ?」と訊くので、ミッケルとハンナはまだ “公認の仲” ではない。ミッケルは、校舎に入るのをやめて 立ち去る(3枚目の写真)。
  
  
  

退職したエゴンは、テーブルの上に載っていた新聞の一面に目を留める(1枚目の写真)。そこには、一面に、マッツの写真入りで、「マッツ跡形なし/マッツ・ニールセンの失踪から1年近く経ったが、依然として手掛かりは一切なし」と書かれている〔失踪は、昨年の10月9日。新聞は6月22日。失踪から8ヶ月と13日で、“1年近く” という表現は間違っているし、いくら地元紙でも、節目でもない日になぜ一面にしたのか?⇒エゴンに注意喚起させるためだけの脚本上のトリック〕。気になったエゴンは、昨年の手帳を見てみる。そして、11月11日火曜日の欄に、「10時半、ヘルゲ・ドップラーに対する取調べ、なぜ森の道じゃないのか〔Warum Nicht WALDWEG?」と書いたことを思い出す(2枚目の写真)。かつて、ウルリッヒは、この記述から、ヘルゲの取調べ記録を探し、それが存在しなかったことでヘルゲを犯人と断定した。しかし、この推定は合っていたが、ヘルゲが取調べを受けなかったのは、出頭を避けたからではなく、交通事故で重傷を負っていたからだった〔“2019年のヘルゲ” が、“1986年のヘルゲ” の行動を阻止するため、1986年に戻り、わざと激突し、自分は死亡した〕。だから、エゴンはヘルゲを全く疑わなかった。今回、手帳を見たことで、エゴンは、まだ入院中のヘルゲに会いに行き、「なぜ森の道じゃないのか」について、改めて質問する。ヘルゲは、その時間にマッツを拉致したとは当然 白状せず、「彼が言ったんだ… すべて変えられるって。過去も未来も変えられるって」と話を逸らす〔これは、9歳のヘルゲにウルリッヒが言った言葉。正しくは、「君は、いつか、人を殺すようになる。建設現場の2人の少年。私の弟。私の息子。今じゃない、未来にだ。だが、それを変えることはできる。過去を変えれば未来も変わる」と言った〕。「“彼” とは誰だ?」。「石の男だ」〔“レンガで殴った男” のこと〕。「それは、30年も前の話だ。マッツと何の関係がある?」。「だが、誰にも、変えられない」。この支離滅裂な答えに満足できなかったエゴンは、自分が1953年に逮捕したウルリッヒがどうなったかを問い合わせる。そして、町の精神病院にいると分かる〔小さな町に5階建ての精神病院は大き過ぎる〕。エゴンはすぐに面会に行く。ウルリッヒは33年間閉鎖病棟に入れられていた。エゴンは、1人で座っているウルリッヒの前に行くと、「よろしいか。もう覚えてないだろうが、私はエゴン・ティーデマンだ」と声をかける。ウルリッヒにとっては、恨み骨髄の人物なので、立ち上がると、「忘れるはずがない」と見下すように言う。そして、以前、エゴンに言った「俺の目的はたくさんの命を奪うこと。多ければ多いほどいい」をくり返す。「覚えてるぞ。前にもそう言った。どういう意味だ?」(3枚目の写真)。「あんたは、未だに、何も理解しとらんアホだってことさ」。
  
  
  

学校をサボったミッケルは、家に帰るわけにはいかないので、誰もいない森に行って、面白くなさそうに木の枝を振り回している(1枚目の写真)。その頃、かつての自宅を訪れた “未来(2052年)のヨナス” は母ハンナを訪れ、真相を明かし、証拠として “夫” の過去の姿〔ミッケル〕を見せると誘い、洞窟の中でタイムマシンを作動させていた。機械が動き始めると、辺りには地響きが拡がり、ミッケルは何事かと立ち止まる(2・3枚目の写真)。
  
  
  

タイムマシンの上には、黒い球形のものが形成されていく(1枚目の写真)。そして、球が急に拡大すると2人を包み込み、33年前(1987年6月22日)に連れて行く。ミッケルは、最初に洞窟に行った時のことを思い出し、何か起きるのかもと思って、洞窟の入口まで走って行く(2枚目の写真)。そして、一旦停まってどうしようかと考え(3枚目の写真)、中に入ってみることにする。
  
  
  

すると、後ろから、「学校に行かなくていいのか?」と声がかかり、ミッケルは振り返る(1枚目の写真)。すぐ近くの倒木に腰を下ろしたノアが、リンゴをナイフで切りながら食べている〔ノアは、なぜこの瞬間にここにいるのか? 彼はタイムトタベラーだが、予知能力はない〕。「あなたなら知ってる。病院にいた人だ」。「ここに来るのが好きなんだ。特別な場所だから。で、君はなぜ学校に行かないんだ?」(2枚目の写真)。ミッケルは何も言わない。「人は、時々、自分がどこにいればいいのか迷ってしまうことがある」。そして洞窟を指し、「私なら、そこには入らない。中は迷宮になっている。戻って来なかった人もいる」。「あなたは 病院で言ったよね、『神様は、すべての人に役割を与える』とか何とか。だけど、もし神様自身が何をすべきか知らなかったら? 神様の考えた役割自体が間違っていたら?」〔ノアは人殺しなので、聖職者でも何でもない。アダムという “全能の神” ぶった男に仕えているだけの独善的な利己主義者にしか過ぎない。だから、このミッケルの言葉は的を得ている〕。ノアは、「神のなさることに過ちはない。君は、もっと神を信じろ。そうすれば、すべて良いようになる」(3枚目の写真)〔2020年6月27日に世界を破壊しようともくろんでいる不遜なアダムの手下の雑言〕。ミッケルは洞窟の入口をじっと見つめるが、中に入ることはあきらめる。
  
  
  

ミッケルが家に帰ったのは、辺りがもう薄暗くなってから〔北ドイツの6月22日の日没は21時半頃〕。心配していたイネスは、「どこにいたの?」と言って抱きしめる。「すごく心配したのよ。学校に電話したら、来てないって言われたし」(1枚目の写真)「何があったの?」(2枚目の写真)。昔のように、ミッケルは口を閉ざしたまま。「聞いて。忘れちゃった方がいい日ってあるの。そんな時にぴったりなのが、ハワイアントーストよ」。そう言うと、イネスは大きなパイナップルの缶を持って来る。「子供の頃、よく食べたわ。真ん中にマラスキーノチェリーが2つ乗ってるの。パパは、エルヴィスみたいに踊ってた」。ミッケルは、「神様を信じてる?」と訊いてみる。「ええ」。「僕たちに、役割を与えてると思う?」。「そう思う。たとえば、あなたが私の元に来たのは、神意だと信じてる。だから、あなたを助けるのが私の役割なの」。無上の愛に感動したミッケルは、思わず、イネスをかたく抱きしめる(3枚目の写真)。
  
  
  

未来のヨナスとハンナは、1987年の家に着く。辺りは、もう真っ暗だ(1枚目の写真)。そこで、画面はまた2つに分かれ、左には、窓から子供時代のミッケルを眺めるハンナ、右には、幸せそうなミッケルを映す(2・3枚目の写真)。2053年に飛ばされていた “2020年のヨナス” は、廃墟になっている原子力発電所の核廃棄物の貯蔵場所上に出来たポータルを活性化させ、どこかに消える。
  
  
  

ここから、第3話「幽霊」に入る。冒頭、シーズン1の最後で、1986年の地下室に飛ばされた9歳のヘルゲが、ノアによって1954年6月23日に戻される〔何人もの少年を殺してきたタイムマシンは、いつの間にか完成していた⇒ご都合主義の脚本〕。エゴンは、スラッシュメタル・バンドのクリーター(Kreator)が1986年4月に発表した「殺す楽しみ(Pleasure to Kill)」の中で、ウルリッヒが2度口ずさんだ言葉が、この曲の歌詞だと分かる〔どうやって付きとめたのだろう?/1987年は、まだネット社会ではない〕。エゴンは、クリーターのレコードを持って、再度ウルリッヒに会いに行き、「どうなっているのか知りたい」と訊く(1枚目の写真、矢印はレコード)。「この歌詞だ。あんたは、1953年にこの言葉を話した。だが、曲ができたのは去年だ」「あんたは息子があると言ってた。なぜ、子供達を殺したんだ?」。「殺してない。救おうとしたんだ」。「なぜ、名前を言うのを拒んだ? 誰なんだ?」。「ウルリッヒ・ニールセン」。エゴンにとって、この言葉は全く信じられないものだった。退職直前にあったマッツの失踪事件で、第一に疑ったのが若き日のウルリッヒだったからだ。ウルリッヒは「未来から来た」と、付け加える。家に戻ったエゴンは、半年前の記憶を頼りに、1986年11月6日〔5日の間違い/小道具作成時の不手際〕に身元不明の少年とのやりとりを記録した紙を探し出す。そこには、「お父さんの名前は?」。「ウルリッヒ・ニールセン」という文言が書いてある。エゴンは、その後、少年を病院に入れ、そこの看護婦が養子にしたことを伝え聞いていた。そこで、次のステップは、その少年に直接訊くこと。そこで、エゴンは早速イネスの家に行く。そして、古い資料の整理をしていたら空白の部分があったので埋めたいと思ってやって来た、と嘘を付く。そして、「少年と話したいのだが」と切り出す。「ミハエルは寝たところです」。「昼間から?」〔学校が終ってからなので、真昼間ではない〕。「気分が悪くて」〔これもPTSD?〕。「彼は、両親について、何か話したかね?」。イネスは、「すべて忘れたいのよ。ミハエルは、今、新しい人生を歩んでるの」と否定する(2枚目の写真)。エゴンが帰ろうとして玄関に行くと、そこに「Flurazepam」という薬の箱が置いてある。作用時間の長い睡眠剤だ。イネスは、自分用だと嘘を付く。エゴンは、最後に、「少年の写真はないだろうか? 記録用なんだが」と、持ちかけ、ミッケルの写真を手に入れる(3枚目の写真)〔退職した警官に、なぜ必要なのかと、不審がられてもおかしくないシチュエーションだ〕
  
  
  

エゴンの3度目のウルリッヒ面会。「去年の冬、見知らぬ少年がヴィンデンにやって来て、当時の私には奇妙に思えることを言った」と語ったエゴンは、「変なことを訊くようだが」と言い、ミッケルの写真を見せ、「この少年を知ってるか?」と尋ねる(1枚目の写真、矢印は写真)。写真を手に取ったウルリッヒは、「ここにいるのか?」と真剣な表情で訊く。エゴンは頷く。ウルリッヒは、席から立って、「どこだ? ずっと、知ってやがったんだな! どこだ? どこにいる?」とエゴンにつかみかかって首を絞める(2枚目の写真)。「吐け! 息子はどこだ?」。怒りが爆発したウルリッヒは、駆けつけた係員によってエゴンから引き離される(3枚目の写真)。「放せ! ミッケルはどこだ?!」〔エゴンが、まともな警官なら、ここでミッケルの名が出たことに気付くべきだが、彼は愚かなので気付かない〕
  
  
  

第4話「旅人たち」にある、短い挿話。最初は、2053年のポータルから消えたヨナスが、1921年6月24日に現れる。次は、カタリーナが署長から、ウルリッヒ逮捕の1953年の新聞記事を見せられるが、この狭量な校長は信じようとしない。それでも、気になったのか、自分の学校の職員室に行き、1986年の保管庫の中から6Bのクラスの集合写真を探し出す(1枚目の写真、シーズン1の写真と同じ、矢印はミッケル)。その中にミッケルを発見したカタリーナは、先ほどの話が嘘でないと知り、息子には二度と会えないと悟って 泣き崩れる(2枚目の写真)〔カタリーナ役の女優は、シーズン1→2の1年半のブランクの間にかなり太っている〕。ヨナスは、ノアに指示されて、教会内にあるエレベーターで地下の洞窟の中にある宮殿のような部屋の中で謎の人物アダムと会う。ヨナスは、2053年の世界にいた時、禁じられた原子力発電所の敷地内に入った罪で、絞首刑になり、途中で赦免されたが首にはロープの食い込んだ痕が生々しく残っている。このアダムがヨナスに会った時に最初にしたことは、その傷跡を見せることだった。彼は、自分が66年後のヨナスだと示唆したかったのだ〔ファンサイトでは、このアダムが「誰か」についていろいろな意見があるが、シーズン3が始まらないと確かなことは何も分からない。ただ、面白かったのは、ハリー・ポッターのヴォルデモードを思い起こさせるという意見。それほど、悪い人間だという意味であろう〕
  
  

ここから、しばらく、第5話「一度失ったもの」が続く。6月25日。一刻一刻と終末に近づいていく。1987年では、朝8時54分、ウルリッヒがいつもの患者の談話室で、閉鎖病棟の鍵を開けて係員が入って来るのを待っている。ウルリッヒは係員が腰にぶら下げたカードキーに目を留める。しばらくして、ウルリッヒが自分の部屋にいると、その係員が、簡単な食べ物のトレイを持って来てテーブルの上に置く。ウルリッヒは、枕の下に隠しておいた陶器の皿〔そんなもの、どこにあった?〕を取り出すと、係員の後ろから近づき、頭を強打する。職員は気絶して床に倒れる(1枚目の写真、矢印はカードキー)。ウルリッヒはキーを奪うと、何気ない素振りで閉鎖病棟を仕切る扉に近づき、カードキーを差し込んで扉を開けて、廊下に出る(2枚目の写真)。
  
  

ウルリッヒは、イネスの家に接近する(1枚目の写真)〔彼は、ミッケルがイネスの家にいると、どうして分かったのだろう? エゴンとはすぐに引き離されたので、彼から聞き出せたハズはない。病院には、ミッケルがイネスの養子になったことなど知る人間は一人もいない〕。玄関前に置かれた屋外テーブルには、何とミッケルが座っている(2枚目の写真)。そして、人の気配に気が付き振り向くと、「どうかしたの?」と尋ねる。33年半ぶりの再会で、感動のあまり言葉もないウルリッヒに、「気分でも悪いの?」と訊き、立ち上がる。その頃、病院では、廊下を歩いていたイネスが、薬品庫からこっそり「Imipramine」のカプセルを盗み、ポケットの入れている〔映像では、最初の “Imi” しか見えないが、“Imi” で始まる薬は2つしかない/イミプラミンは強力な抗うつ薬⇒イネスは、ミッケルのPTSDへの対処療法として、こっそっり飲ませているのだろう(PTSDの現在の第一選択肢はSSRIとSNRIだが、1987年にはまだ存在しない。現在でも第二選択肢はイミプラミン)〕。イネスは、他の看護婦に見つかりそうになるが、何とか無事に言い逃れる。その時、その看護婦は、1950年代に2人の子供を殺し、もう1人を殴って半殺しにした男が精神病院から逃げ出したと教える。イネスは、ミッケルに関係しているのかもしれないと心配になる(3枚目の写真)〔イネスが、ミッケルについて何を知っていたかに関する会話は、全18話の中で、シーズン1で既に紹介した場面しかない。その中に、ミッケルの父に関するものは一切ない。だから、狂人の逃亡とミッケルを直接結び付けたとは思われない〕
  
  
  

ウルリッヒがテーブルに座って待っていると、ミッケルが玄関からオレンジジースの入ったコップを2つ持って出てくる(1枚目の写真)。2人は仲良く一緒にジュースを飲む(2枚目の写真)。ジュースを少し残してコップをテーブルに置いたミッケルは、改めて男を見る(3枚目の写真)。
  
  
  

「何だか、見覚えがあるみたい」。その言葉に、今度は、ウルリッヒがミッケルをじっと見る。「33年以上、この瞬間を待っていた」。そういうと、ウルリッヒは、空にしたコップを逆さまにする。そして、以前、ミッケルが手品を見せ、父が「すごいな。どうやったんだ?」と質問した時にした返事を くり返す。「『問題は、“どう” じゃなく “いつ” なんだ』。お前が言ったんだ。覚えてるか?」(1枚目の写真)。ミッケルは、怖れたように頷く。それを見たウルリッヒは、ミッケルを抱きしめる(2枚目の写真)。ミッケルは、「パパ」と 嬉しそうに言う(3枚目の写真)。非常に感動的なシーンだ。
  
  
  

イネスが、急いで家に帰ると、ミッケルの姿はどこにもない。玄関から外に出て(1枚目の写真)、テーブルの上を見ると、コップが2つ置いてある。父親が来て、ミッケルを連れ去ったのだ。イネスは、すぐエゴンに電話する。そして、①家に帰ったらミッケルがいない、②精神病院から1953年に子供を殺した男が逃げた、の2点を伝える。エゴンは、現職ではないので、脱走の話は知らなかったが、「すぐに警察に知らせる。どこに行こうとするか、分かると思う」と言って、電話を切る〔33年半前、エゴンは、洞窟に入る直前でウルリッヒを逮捕した〕。その頃、ミッケルとウルリッヒは洞窟目がけて全力で走っていた(2・3枚目の写真)。
  
  
  

イネスを乗せたエゴンの車を先頭に、2台のパトカーが続く。エゴンは、洞窟に一番近い地点で車を停める。イネスが一番に飛び出して洞窟に向かって走る(1枚目の写真)。ウルリッヒとミッケルが手をつないで洞窟の入口に近づいた時(2枚目の写真)、後で銃声がし、「止まれ! 動くな!」と、3人の警官が銃を向けて命じる。ウルリッヒな、必死に、「どうか、取り上げないでくれ。私の息子だ」と頼むが、警官は、「跪け!」と命じるだけ(3枚目の写真)。
  
  
  

一斉に駆け寄った3人の警官により、ミッケルは引き離される(1枚目の写真)〔この時、なぜミッケルは、『パパ!』と叫ばないのだろう?〕。イネスが、「ミハエル!」と言って駆け寄っても、目は父を見ている(2枚目の写真)。しかし、諦めきった悲しそうな顔だ〔もう、運命に翻弄されるのが嫌になったのだろうか? それとも、父の存在は一時の幻と映ったのだろうか~父の外観があまりに違い過ぎるので〕。ウルリッヒは、2人の警官に取り押えられても、「ミッケル、必ず戻る。そしたら、家に連れ帰る。約束する」と話しかける(3枚目の写真)。ミッケルは、ただ父を見送るのみ(4枚目の写真)〔ひょっとしたら、これも、PTSDの影響か? そして、イネスが与えている抗うつ剤が、あらゆる感情を抑え込んでいるのか?〕
  
  
  
  

ウルリッヒは、そこにエゴンがいるのを見つけると、「みんな貴様のせいだ。いつもそうだ。次は、絶対、貴様を殺してやる」と怒りをぶつける(1枚目の写真)〔洞窟まであと一歩のところで、2回も邪魔されたので、怒りは当然だろう。しかも、この愚かなエゴンは、自分が何をやらかしたかすら、理解していない〕。ミッケルは母に抱かれてエゴンの車に戻り、ウルリッヒは精神病院のベッドに縛り付けられる。
  
  

アダムは、自分専用のポータルの前にヨナスを連れて行く。このヨナスが、シーズン1で登場した “ヨナスB” にあたる。ヨナスBは、このポータルを使い2019年6月20日に向かう。ヨナスBは、その日のことを、「すべてが始まる前の日」と表現する。「パパが自殺する前、すべてが崩れる前」。それに呼応するように、アダムは、「君が、自殺を止められれば、その後のすべてのことは起こらない、ミッケルは過去に戻らない。君と私… 我々は生まれない。だが、他の全員は生きる」と、甘言を連ねる。そして、ヨナスBは、そのつもりでポータルに入る。ここから、第6話「無限のループ」。ミッケルが登場する最後の回だ。冒頭、ヨナスが自分のベッドで起きる場面から始まる(1枚目の写真)。このあらすじの最初から2枚目の写真と対比すれば、ミッケルの時代と全く同じ角度での撮影なので、両者の違いがよく分かる。ヨナスは下に降りて行き、自分でシリアルだけの朝食を作る。その時、父ミハエルと会う。「お早う」。「お早う、寝坊助」。一番遅く起きてきたのが母ハンナ。ハンナは、ヨナスに、「今日は、カタリーナとウルリッヒのパーティよ。遅れないで」と言い、夫には、「ホントに行きたくないの?」と念を押す。ミハエルは何も言わない〔ミハエルは、自分自身に会うのが怖くて、一度もパーティに行ったことがない〕。時計は10時半に近い。それを見たヨナスは、友達と湖で遊ぶ約束あるので、食事を途中でやめ、急いで黄色の雨合羽を手に持つ〔ヨナスBがいつも着ている〕。この雨合羽は、いつも家に置いてあるものなのに、今朝のミハエルは、なぜかそれに驚き、手に持っていたガラス瓶を落す(2枚目の写真、矢印は落下方向)。「パパ、大丈夫?」。「何でもない。大丈夫だ。なんだか、デジャヴに襲われて」(3枚目の写真、矢印は黄色の雨合羽)〔なぜ、急にデジャヴが始まったのか?〕
  
  
  

一方、ウルリッヒとカタリーナは、記念日なので、朝から愛し合っている。そこに、ミッケルが入って来る(1枚目の写真)〔これまでは、失踪から7ヶ月後のミッケルだったので(年齢差は11ヶ月)、シーズン1と2の撮影日の差、1年半によるDaan Lennard Liebrenzの11歳から12歳半への成長がそれほど目立たなかったが、ここからは、失踪の5ヶ月前を演じなければならず(年齢差は2年)、違和感がある。そのためか、風疹で顔じゅうに赤い斑点をつけている〕。カタリーナは、顔だけでなくパジャマの下も発疹だらけだと分かり、「よりによって、なぜ今日なの?」とがっかりする(2枚目の写真)。「さあ、お医者さんに行くわよ」。
  
  

ヨナスBが教会から出て、道路まで歩いてくると、ミッケルを医者まで乗せて行くウルリッヒとカタリーナの車が通りかかる。車は一時停車し、カタリーナが「ヨナス」と呼びかける(1枚目の写真)。「湖に行きたくないの? マルヌスとマルタは、ずっと前に出かけたわよ」。その時、後部座席に座っていたミッケルが拳を握った右手を窓から出し、「究極のグータッチする?」と訊く。カタリーナは、すぐに、「拳に触らないで。風疹なの」と言い、ミッケルは手を引っ込める。「自転車は? 乗ってく?」。ヨナスBは首を横に振る。「じゃあ、今夜ね」。ここで、ウルリッヒが運転席から、「君が来て、喜ぶのはマルヌスじゃないぞ」と言う(2枚目の写真)。ミッケルが、「マルタが、お熱なのはみんな知ってる」と言ってニヤニヤする(3枚目の写真)。「やめなさい」。ヨナスBは、最後まで厳しい表情を崩さない。
  
  
  

ウルリッヒの一行は、ミハエル/ハンナの家に行く〔医者に行くのが最優先ではないのか?/それとも、医者に行った帰り?〕。ハンナは、「記念日おめでとう」と言い、カタリーナは、「信じられない。25年よ」と応じる。ハンナが、お祝いのグラスを渡す。ミハエルは、2階の窓から、こっそり様子を伺っている(1枚目の写真)。何せ、自分の真の父母だから。その時、後部ドアが開き、ミッケルが姿を見せる(2枚目の写真、矢印)。自分自身を見たミハエルは、カーテンの陰に隠れる。ミッケルは、「おしっこ、行きたい」と言い出す(3枚目の写真)。
  
  
  

ウルリッヒは、「木陰でしてこい」と言うが、カタリーナは、「トイレを借りてもいいかしら?」と訊く。しかし、ハンナの目は、ミッケルに釘付けになっている。ミッケルも、見られているので、ハンナをじっと見る(1枚目の写真)。ハンナの呪縛は解け、「玄関からまっすぐの突き当たり」とミッケルに教える。そして、2人には、「デジャヴかしら」と言い訳する(2枚目も写真)〔ハンナは、ウルリッヒと親しいので、いつもウルリッヒ家には行っているハズなのに、なぜ “昔のミッケル” を思い出してびっくりしたのか? 少し前の、ミハエルの “デジャヴ” といい、脚本による “あざとい やらせ” としか思えない〕
  
  

ミッケルは玄関から中に入って行く。中は、照明が切ってあり、カーテンも閉めてあるので、日中とは思えない暗さだ(1枚目の写真)。ミッケルは、正面にあったトイレに入る(2枚目の写真)。ミハエルは、もともと裸足なので、音がしないよう、そっと階段を降り、ミッケルが中にいるトイレの前に張り付く(3枚目の写真)。自分自身との33年の時を隔てた近接遭遇だ。
  
  
  

ミッケルが、トイレから出てくると、ミハエルはドアの後ろに隠れるように張り付く(1枚目の写真)。しかし、何となく恐ろしげな雰囲気に、ミッケルは辺りをきょろきょろと伺い、振り向いた時にミハエルを見てしまう(2枚目の写真)。そして、怯えたようなミハエルの顔を見て(3枚目の写真)、怖くなって外に飛び出して行く。
  
  
  

ヨナスBは、夕方になって、目的地、ミハイルの家に到着する(1枚目の写真)。そのまま2階に上がって行き、半年前の自分の部屋を見る。家には誰もいないはずなので、人の気配を感じたミハエルが顔を出す。「ニールセンにいたんじゃなかったのか?」。ヨナスBは、悲しい自殺以来、初めてみる父の笑顔に言葉もない。「どうかしたのか?」。ヨナスBは、何も言わずに、父を優しく抱きしめる。ミハイルは、今朝、ヨナスに会ったばかりなので、突然の態度に戸惑う。ヨナスBは。ミハエルから離れると、じっと顔を見て、「知ってる」と言う。「何を知ってるんだ?」。「全部だよ」。そして、拳を握って腕を上げると、「究極グータッチする〔Ultimate fist bump〕?」と訊く〔恐らく、これは、先ほどの車の中でミッケルがやったので思い出したのだろうが、2人はいつもこうやって挨拶していた。シーズン1のあらすじの3節目の最初の写真参照〕。ミハイルにとっては33年ぶりだが、その仕草は記憶に残っていて、驚いてヨナスBを見る。「なぜ、知ってるんだ?」。「知ってるからだよ、パパ。何もかも。パパが、ミッケル・ニールセンだってことも」(2枚目の写真)。2人は、もう一度抱き合う。
  
  

一方、結婚25周年のパーティでは、ミッケルが2階から元気なく降りてきて、パーティの中心にいる母の前に行く。「どうしたの?」。「眠れない」(1枚目の写真)。カタリーナが頬に触ると、熱が非常に高い。そこで、そのまま階段を登らせ、2階に着くと前抱きにしてベッドまで運んで行く(2枚目の写真)。ベッドに降ろすと、額にキスをして、「よく眠るのよ、お休み」と声をかけるが、ミッケルは、「眠るまでいてくれる?」と頼む。自分が主役のパーティより息子の方が大事だと思ったカタリーナは、ミッケルを脇に寄らせ、ベッドに横になると、抱きしめる(3枚目の写真)。
  
  
  

ミハイル:「じゃあ、未来から来たのか。なぜ、今になって、ここに?」。ヨナスB:「どうしても頼みたいことがあって」。「何だ?」。「やらないで」。「何を “やる” んだ?」。「ウルリッヒとカタリーナの記念日に、パパは一度も出たことがない。でも、あの日は どこか違ってた。僕は、それに気付くべきだった」。「ヨナス、何のことだか…」。「嘘は付かないで。いい? 全部分かってるんだ。パパが、アトリエで首を吊ることも。手紙はもう書いた?」。「手紙って?」。ヨナスBは、手紙を渡す(1枚目の写真、矢印)。「『11月4日、午後10時13分まで開けるな』って書いてあった。パパが消えた時間だ」。何のことだか分からないミハエルは、手紙を真剣に読む。「パパが、やらないよう、止めに来たんだ。すべては、終わりのない輪のようにつながってる。だけど、その始まりは、パパの自殺なんだ。お願い、やらないって約束して」(2枚目の写真)。
  
  

ヨナスB:「パパが消えた夜… いたと思ったら、急にいなくなったけど、洞窟に戻ったの? 通路を見つけたの?」。ミハイル:「見つけたんじゃない。教えられたんだ」。「誰に?」。「お前だ」。今度は、ヨナスBが驚く番だ。「それ、どういう意味?」。そして、シーズン1の洞窟の前のシーンが再現される。ミッケルの、恐怖で凍りついた顔(1枚目の写真~前と同じ)。そのミッケルを、傍らの木の影から、黄色の雨合羽を着たヨナスCが様子を窺っている(2枚目の写真、矢印)。ヨナスと一緒にいたミッケルは、ヨナスに促されて一緒に逃げ出す(3枚目の写真~前と同じ)。それを見たヨナスCも2人の後を追う。
  
  
  

ミハイル:「私達は走った。だが、振り返った時には、お前はいなかった」。ミッケルは、必死でヨナスを探す(1枚目の写真)。「そして、突然、背後から現われた」。ヨナスC:「急げ、こっちだ」(2・3・4枚目の写真)。「お前は、森の中に何かがいると言った。何か、悪しき物が。そこで、私達は洞窟に戻った。お前は、私を扉まで連れて行き、通路を通った。私は凄く怖かったが、お前は私の手を握り、夜の間はここにいるべきだと言った。朝がくれば、すべて順調だとも。目が覚めると、お前はいなかった。お前が、なぜそんなことをしたのか、長いこと考えたもんだが、時とともに忘れていった。夢のように、現実とは思えなくなった」。「そんなことありえない。僕はやってない」〔ヨナスBのくせに、近未来のCの存在を否定するのは おかしい〕
  
  
  
  

「今日、自分を見た。ミッケルだ。みんな戻ってきた。雨合羽もお前も… すべてが、定められたように。たぶん、お前は止めにきたんじゃない。私がすべきことを示しに来たんだ。手紙を見せたのも、私が書くべきことを書いて死ぬためだ」。「そんなはずがない。彼は、元から変えられるって言った。パパが自殺しなければ、何も起きないって」。「だが、そうなれば、お前は生まれてこない。お前が果たす役割は、お前が考えているよりずっと大きいに違いない」(1枚目の写真)。結局、アダムは嘘付きだった。ヨナスBは、父ミハイルの自殺を止めに派遣されたのではなかった。自殺することなど考えてもいなかったミハイルを、自殺に追いやるためだった。それによって、ヨナスがヨナスBとなり、いつかはヨナスCとなり、33年後には大人のヨナスに、66年後にはアダムとなって “時” の支配者となるために。場面は、ウルリッヒの家に変わる。カタリーナは、結局、ミッケルと一緒に寝てしまった(2枚目の写真・左)。パーティが終わった後、ウルリッヒとハンナは 記念日だというのに愛し合う(2枚目の写真・右)。1人家に残ったミハイルは、その日の朝までは、書こうなどと考えもしなかった遺書をしたためる(3枚目の写真)。
  
  
  

第7話「白い悪魔」の冒頭、アダムの独白が流れる。「人は奇妙な生き物だ。その行動は、欲望によって動機付けられ、その性格は、苦痛により形作られる。痛苦を抑えようとしても、欲望を抑えようとしても、感情の永遠の束縛から解き放たれることはない。心の内に怒りが渦巻く限り、平安を見出すことはできない。生きていても(1枚目の写真)。死んでいても(2枚目の写真)。だから、人は、必要なことをするしかない。苦痛を船とし、欲望を羅針盤として(3枚目の写真)。それが人にできることだ」。この大仰で、高飛車で、高尚そうに見える言い回しが、このシリーズの人気の秘訣なのかもしれない。3枚目の奇妙な男が、アダムだ。なお、この第7話では、ハンナが再び1987年に行き、ウルリッヒがカタリーナを選んだことへの鬱憤を晴らすシーンがある。この女性は、自意識過剰で、自己愛しかない人間であることがよく分かる。エゴンは、その愚かな生涯に見合った惨めな死に方をする。第8話「終わりと始まり」では、原子力発電所の不法廃棄物が原因で破壊的な爆発が起こるが、その前に、ヨナスを救いにきた女性(マルタ)が、どの時間から来たのかと訊かれ、“時間” ではなく “世界〔Welt〕” と言うので、シーズン3では設定がさらに複雑になることが予想される〔その中には、ミッケルが失踪しない世界もあるのだろうか?〕
  
  
  

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